寝違え

基礎情報

寝違え、というのは睡眠中に頚部が長時間不自然な位置を保った結果で起こる急性の頚部痛です。画像検査でも特別異常はありません。通常は3~5日程度で症状は改善します。自然に軽快するケースが多いとはいえ、痛みとともに顔を横に回せない、うがいが出来ない、というように日常生活がかなり不自由となってしまいます。好発年齢は当院では20~30代の男女が多いです。
古くから鍼灸は寝違えを扱っており、著効することが多くあります。

症状

一般的に、朝起床した時に既に頸部の痛みを感じていて、動作と共に次第に疼痛が強くなります。なかには、痛みが強く頚部を支えていないといられないほどになることもあります。痛みの場所は首の後部~外側にかけてが多く、強い痛みを伴うこともしばしばあります。

評価

まず、疼痛の部位を確認します。多くの場合、片側性で後頚部が疼痛部位だと訴えます。頚部の深層筋は胸椎に連結している筋が多いため、胸椎レベルの筋肉に問題が無いか、念のため触診します。次に腰かけてもらい、顔を上下、左右に動かしてもらいます。動作の最終域で角度を測り、記録します。この時、可動域制限が大きい場合はより多くの筋肉が緊張状態にあるという予測が立てられます。

一般的な治療

寝違えは1週間以内に軽快するというのが大部分であるので、医療機関では痛みを緩和させる鎮痛剤や湿布の処方や温熱療法が行われます。場所によっては「トリガーポイント注射」を行う病院もあります。痛みが強いケースでは「頚椎カラー」を処方されることもあります。

当院における治療

寝違えは、圧痛を確認した部位を中心に刺鍼していきます。主に片側なので「横向き」に寝ていただいた姿勢で鍼を施術することも多くあります。頚部の筋肉が最も重要なポイントですが、胸椎レベルの脊柱起立筋も緊張していることが多いので、この部位も可能な範囲で刺鍼していきます。頚部では後頭骨直下から第7頚椎の高さまで、棘突起の外側2cmの縦ライン、そこから2cmずつ外側に肩甲挙筋のライン、後斜角筋、中斜角筋、前斜角筋のラインへと刺鍼します。前斜角筋への刺入は気胸を起こさないよう、頸動脈を貫かないよう注意を払いながら刺鍼していきます。
ここまでで、さらに鍼を受ける余裕がある方は第1~7胸椎の2cm外側のライン(夾脊)に鍼を入れていきます。