股関節の神経

はじめに

痛みのメカニズムで説明したように、痛みは受容器というセンサーで電気信号に変換され、神経という電線でシグナルが脳に伝えられます。この神経が圧迫されると「しびれ」が起こり、引っ張られると「痛み」が生じます。
従って、どのような神経がどのように走行しているのかを理解しておくことが、とても重要となります。
この項では、臨床で最低限知っておきたい股関節の神経を説明していきます。

関節包の神経支配


関節包は股関節周囲組織で最も感覚受容器が多いといわれています。ここでは深部感覚を感知するルフィニ小体、加速度を感知するパチニ小体、痛覚を感知する自由神経終末などの受容器があります。
股関節の前側は大腿神経と閉鎖神経の枝が分布し、後ろ側は坐骨神経の枝が分布しています(右図参照)。

股関節周辺の神経走行


上図のように腰部から尾方(下方)へ神経が通過しています。
10種の神経が通過しますが、ここではその中でも重要な大腿神経、外側大腿皮神経、坐骨神経について説明します。

重要な神経

1. 大腿神経

大腿神経はL2~L4の前枝から始まり、鼠経靭帯と骨盤の間を抜けて腹部を出て、大腿前内側の大腿三角に入ります。
運動機能:大腿前区画のすべての筋と腹部では腸骨筋と恥骨筋へ枝を出す。
感覚機能:大腿前側、膝の前内側部、下腿と足の内側面を支配。
※大腿神経が圧迫を受けやすいのは、「骨盤内部」と「大腿部」です。臨床上、この2つの部位がポイントとなります。

2. 外側大腿皮神経

L2,3の枝から始まり、腸骨筋の表面を斜めに下り、上前腸骨棘の内側で鼠経靭帯の下を通り、大腿筋膜を貫いて大腿外側面へ分布します。
感覚機能:大腿外側面。
※大腿部外側の痛み、感覚障害はこの外側大腿皮神経が問題の可能性があると考えることができます。

3. 坐骨神経

体内で最も太い神経で、L4~L3から始まります。坐骨神経は、梨状筋の下方で大坐骨孔を通って殿部に入り、殿部を通り抜けてから大腿の後面に入り、2本の枝に分かれます。
その2つとは、総腓骨神経と脛骨神経です。
運動機能:大腿後面の全ての筋と大内転筋の坐骨から起こる部分。下腿と足の筋。
感覚機能:下腿と足の外側面, 足底と足背の皮膚。
※坐骨神経の感覚支配は膝より遠位部です。ふくらはぎの安静時痛があるという症状があったら、まず坐骨神経に問題が無いか疑うでしょう。