鍼灸について

鍼の理論

なぜ痛み・コリを生じるのか

中国の古典医学書である「内経」には「通じなければ痛む」と書いてあります。中国医学では「気」という力で血液を動かしたりコントロールするという概念があります。気が滞ると血が流れなくなり、痛みが起きると考えたのです。そこで血が滞った部位に鍼を入れて詰まった組織を壊して掃除する。その結果、血流が再開して組織が栄養され病が治りました。

筋肉に物理的な負荷がかかると筋肉が収縮します。その状態を続けると、筋肉内の血管は圧迫され血が循環しなくなりうっ血します。うっ血するとは血液が酸欠状態になることを意味します。
新鮮な酸素が入ってこないため、筋肉の緊張(硬い)状態が続き 、筋肉に物理的な負荷がかからなくなっても緊張が解けなくなってしまうのです。これを昔は経脈が攣ると呼んでいました。
こうして血管が筋肉で圧迫される状態が続きますと、酸素不足のため更に筋肉の緊張が強くなり、痛みを出すほど神経を締めつけます。これを絞扼痛と呼びます。例えば「正座をしてふくらはぎが痛くなる、足がしびれる」というのは正座という姿勢により、体重がふくらはぎにかかり神経が圧迫されるために痛みやしびれが生じるのです。
2014年7月、大腿筋膜張筋に針先をずらしながら生理食塩水を注入すると厚くなっている筋膜の重積がバラバラと分離される様子が確認されました。注射直後より鎮痛効果や結合組織の伸張性・柔軟性の改善も確認されました。このことから、筋膜の癒着が「痛み」に関して影響していることが分かりました。

ここまでを整理すると

  1. 筋肉の緊張(硬さ)により痛みやコリを誘発する。
  2. 筋肉の緊張により神経を圧迫して神経痛を生じることがある。
  3. 筋膜の癒着により痛みが生じることがある。

解決方法

筋肉に問題があるのか、という点を判断するには基準があります。
まず、筋肉を軽く圧迫して痛みがあるかどうか確認します。筋肉は筋膜という膜に包まれており、その筋膜には痛みを感知するセンサー(受容器)が多く存在します。そのため、緊張した筋肉は少しの圧力で痛みを感じやすくなっており、圧迫した筋肉が発痛源だと分かります。
次に動かしてもらいます。例えば大腰筋という筋肉を例に説明すると、大腰筋は股関節の前側を通り腰椎(腰の背骨)から大腿骨に付着しています。体を後ろに反らせる格好で伸長され、前屈する格好で短縮します。大腰筋は筋肉の中を神経が通過しているため、筋肉が硬いと身体を後ろに反らせた格好で神経が引っ張られ痛みが生じます。または防御的にあまり後ろに反れません。このように、動きを見てどの筋肉に発痛源があるか推測できるのです。
最後に夜間痛です。夜間になると血圧が下がり、脈拍も低下します。この時、緊張した筋肉はただでさえ血流不足で酸素が少ない状態ですが、更に酸素が不足してしまいます。そのため、夜間に筋肉の緊張が強くなり痛みを生じます。

これらの情報を収集して、どの筋に鍼を入れるか判断します。
そして問題と考えた筋に鍼を入れます。発痛源が表層にあるか深層にあるかは刺入する抵抗感や患者自身が感じる「得気」により判断できます。鍼が緊張した帯状域に入った時は刺入する際の抵抗感が増します。そして針が筋肉にぎゅっとつかまれて、時に患者自身が強い痙攣様の感覚(得気)を生じることがあります。これは発痛源に鍼が入ったことを意味しており得気の重要性は中国の古典にも記録があり、昔から重要な指標とされてきました。
このような反応があると、痛みやこりに対して即効性のある効果が期待できます。
このように「解剖学的」「神経学的」な知識を根拠に施術を行うため、再現性が高い施術となります。

鍼灸の適応疾患

1996年、WHO(世界保健機構)は鍼灸の適応について以下の疾患を提案しました。

  1. 運動器:テニス肘、頚部筋筋膜症、肩関節周囲炎、慢性関節リウマチ、打撲と捻挫、変形性関節症 等。
  2. 消化器、呼吸器:下痢・便秘、潰瘍性腸症候群、急性扁桃炎、咽頭炎、喉頭炎、慢性副鼻腔炎、気管支喘息など
  3. 疼痛疾患:頭痛、片頭痛、緊張型頭痛、坐骨神経痛、扁桃腺摘出術後疼痛、抜歯疼痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛
  4. 循環器系疾患:狭心症を伴う虚血性心疾患、高血圧症、低血圧症、不整脈など
  5. 泌尿器、産婦人科系疾患:月経困難症、分娩誘導、月経異常、不妊、ED、遺尿症、尿失禁など
  6. その他:近視、肥満、メニエール症候群、片麻痺、うつ病、薬物中毒、アルコール中毒

当院の得意な疾患

  • :頭痛 顔面神経痛 顎関節症 眼精疲労 めまい 耳鳴り
  • :首凝り ムチウチ 寝違い 頚椎症 頚椎ヘルニア
  • :肩こり 五十肩 腱板損傷 石灰沈着性腱板炎 肩甲骨間の痛み
  • :内・外側上顆炎 手根管症候群 上腕二頭筋腱炎
  • :腱鞘炎・ばね指
  • 腰背:背部痛 慢性腰痛 急性腰痛(ぎっくり腰) 坐骨神経痛 腰椎椎間板ヘルニア
  • :鼠径部の痛み おしりの痛み 変形性股関節症 大腿前面の痛み
  • :オスグット病 変形性膝関節症 膝うらの痛み
  • :シンスプリント 外反母趾 偏平足 足底筋膜炎 踵の痛み
  • 婦人科系:生理痛 生理不順
  • その他:全身疲労 冷え性 不眠症 線維筋痛症 自律神経失調症 うつ病