首のしくみ

首のしくみ

首の解剖

A)全体像

頭にあるように首の骨(頚椎)は7個あります。頚椎は英語でCervical spineといいその頭文字をとってC1やC2と表記されます。
頚椎は首のほぼ中央にあり、上部の重みを支えるという役割があります。その中心となるのは椎体です。頚椎は胸椎や腰椎より椎体の割合は低いですが、椎体には50~60%の荷重がかかるといわれています。椎体は下の頚椎ほど横径が大きくなり、可動性は小さくなるという特徴があります。
C1とC2は頭の重量を支えながら、あらゆる方向に動かせるように特徴的な構造となっています。C2の前方に円柱状の突起があり、C1がその突起と関節を成して特に回旋する時に大きな役割を果たします。
頸部を側面からみると全体的に前に凸のカーブがみられます。これは前弯している状態で、この前弯が無くなった状態をストレートネックと呼びます。

B)椎間板
椎間板は「あんパン」のような構造をしています。パンの部分に当たるのは「線維輪」といい、あんに当たるのは「髄核」といいます。線維輪は層状構造になっていて、あらゆる方向の応力に抗しています。髄核は柔軟性があり応力を分散してくれる作用があります。
頚椎は脊柱の中でも可動性が高いのですが、椎間板がクッションの役目を果たしているからこそ、大きな可動性を維持できているのです。
椎間板は血行に乏しく、加齢により変性してきます。この変性は髄核内の水分減少により起こるとされています。

C)鉤椎関節(ルシュカ関節)
椎体の上面は両端が隆起して椎間板がはまり込むような形になっています。真の関節という構造ではないものの頚椎の運動制御には重要な役割を果たしています。鐙らは、鉤椎関節後方ほど安定性への寄与が大きく、特に上位頚椎では回旋安定性への貢献が大きいと報告しました。

D)椎間関節(C2~7)
前方から見て横突起の内側に上関節面、下関節面があります。上関節面は上の椎体の下関節面と関節を成しています。屋根瓦上の形態をしており、大きな可動性を有しています。椎間関節の関節面は水平面に対し45°傾いています。 Nowinskiらの報告では、片側全椎間関節切除、椎弓切除+50%以上の片側椎間関節切除、あるいは椎弓切除+両側25%以上の椎間関節切除は、不安定性をもたらすとされています。

E)椎骨動脈
椎骨動脈は鎖骨下動脈から出て、C6~C1の横突孔を通り、C1の上縁で内側に向きを変えC1後弓の上方を横切ります。その後、脳底動脈に至ります。

頸の運動学


上図が主な首の運動方向と参考可動域です。運動方向とその呼び方は以下の通りです。

下を向く → 屈曲  上を向く → 伸展
右へ傾ける → 右側屈 左へ傾ける → 左側屈
右へ向く → 右回旋 左へ向く → 左回旋

首の筋肉が緊張すると、顔を下に向けにくくなったり、横を向く時も少ししか向けなくなったりと関節可動域が低下します。

関節、領域 屈曲と伸展 軸回旋 側屈
環椎後頭関節 屈曲:5 無視 約5
展:10
合計:15
C1-C2 屈曲:5 35~40 無視
展:10
合計:15
C2-C7 屈曲:35~40 30~35 30~35
伸展:55~60
合計:90~100
合計 屈曲:45~50 65~75 35~40
伸展:75~80
合計:120~130

環椎後頭関節

環椎後頭関節は環椎(C1)と頭蓋骨の関節をいいます。頭蓋骨の後頭顆と環椎の上関節面のくぼみと関節を成します。主な動作は屈曲と伸展です(角度は上の表を参照)。

環軸関節複合体(C1-2)

C1-2間は真ん中部分で「正中環軸関節」という特別な関節があるため、回旋動作に有利な構造となっています。上の表からわかるように、回旋角度はC2-7を合わせた角度よりC1-2間の方が大きい角度になっています。

矢状面(前後方向)の運動

運動全体の約20~25%が環椎後頭関節と環軸関節複合体によって行われ、残りがC2-7の椎間関節によって行われます。